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「熟した柔らかい果実と、歯触りのよい少し硬めの果実――どちらが食べたい?」 オルシアン領主家の末弟『アルベルト』は心優しく誠実な青年だ。 そんな彼に、婚約の知らせが舞い込んだ。 婚約者の名は『ティアナ』。 遠く離れたシーバ領、元領主の娘だった。 お互い一度も顔を合わせたことはなく、不安に思うアルベルトであったが、これは貴族同士の結婚ではよくあることだった。 いざ婚約者ティアナとその母親ローレリアがやってくると、そんな不安は一気に吹き飛んだ。 美しく凛としたティアナの姿を一目見て、アルベルトは胸を躍らせ、彼女との生活に希望を抱くのであった。 一方、ティアナは婚約に乗り気ではなかった。 彼女には幼い頃から想いを寄せる男性がいたからだ。 幼き日に、街で迷子になって泣いていた自分を助けてくれた名前も知らない男の子―― 大きくなったら彼と結婚したいとずっと願っていたのだ。 しかも、騎士道精神を重んじるティアナの目には、アルベルトは軟弱で頼りなく映り、邪見にされてしまう始末。 どうやら、アルベルトは同年代の女性との付き合いに乏しく、自分に自信が持てないようだと気づいたローレリア。 このままではティアナとの結婚が上手くいかないと危機感を募らせる。 そこでローレリアはアルベルトに、女性の扱い方を教えたり、男としての自信を付けさせて、 ティアナが惚れる『頼れる男』になれるよう、手ほどきしていこうと決意するのだった。

