聖淫の迷宮

「これより、魔女裁判を始める。」 その俺の言葉の意味を彼女は分からなかったようで、キョトンとしている。 今はそれで構わない。 もう……コイツは俺という “異端審問官” の手から逃れることは出来ないのだから。 発端は一ヵ月前。 “21世紀の日本に聖女現れる！” そんな見出しでスポーツ紙に取り上げられた記事…… これが大きな波紋を広げた。 その内容が、難病にかかった親友を少女の祈りが奇跡的に治してしまったという話だったからだ。 載っている紙面の性質から考えれば、何かの与太話と笑い飛ばすような内容。 しかし、その記事の内容を快く思わない連中が存在していた。 「どんなことがあろうと、神以外の者が……人が奇跡を起こしてはならない。 もし、そんなことが起きたとしたら、それは人ではなく、魔女である。」 そんな主張をする、とある宗教の一派があったのだ。 その教団は、奇跡を行ったと主張する者に対して魔女裁判を行い、目障りな存在を消去する役割を果たす。 今回の件も、魔女裁判を行うことに決定した。 そして担当するのは、唯一の異端審問官である俺・来栖誠矢。 産まれた時に捨てられ、教団に育てられた俺は教団の教えに絶対的な忠誠を誓っており、そのための技術も徹底的に仕込まれているのだ。 彼女に虚偽の罪を負わせて孤立無援にした後、俺は救い手として彼女の前に現れた。 俺を信用した彼女は、ここ……魔女裁判のために建てられた特殊な聖堂へと素直について来た。 そして、冒頭の俺の言葉である。 今、奇跡を起こすJKへ容赦の無い “魔女裁判” が始まるのだ。