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家族の顔をして、家族のフリをして、家族として過ごす「誰か」 大切な場所が、気付いた時には「誰か」のものへと変わってしまう 心を操り、身体を奪い、宿を借りる『ヤドカリ』 <六郷達陽の場合> 「お礼なんていらないよ。僕がそうしたいと思っているんだから」 六郷達陽は、学生時代に知りあい長い付き合いを経て清香(さやか)と結婚をした。 仕事は忙しく共に過ごす時間は減ってはいたが、愛する妻との新婚生活は幸せに満ちていた。 しかし、会社の飲み会で泥酔し見知らぬ男――稲城是政に介抱されたことが愛する妻との平穏な日々の終わりの始まりだった。 <稲城是政の場合> 「今、住んでいる家にも、そろそろ飽きてきた。新しいところを探すか」 稲城是政は催眠術の力を使い、気に入った女がいれば手を出してその家に入り込む。 そうして、勝手気ままに過ごしていた。 そんなある日、たまたま耳にした美人妻の話に興味を持った。 酔って前後不覚になっている美人妻の夫――六郷達陽を介抱すると、家へと向かう。 出迎えた妻、清香を見た瞬間、是政は夫婦の家に入り込むことに決めるのだった。



